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東京地方裁判所 昭和57年(ワ)7576号

原告

広瀬恒行

右訴訟代理人弁護士

村井勝美

大久保和明

被告

日本調査株式会社

右代表者代表取締役

牛塚藤雄

右訴訟代理人弁護士

仁藤一

玉生靖人

紺谷宗一

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  原告が被告の選任調査職員としての従業員の地位を有することを確認する。

2  被告は、原告に対し、昭和五七年六月三日から原告が被告会社において従前の正常な業務に復帰するまで、毎月末日限り、一か月金四五五、八八二円の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  第2項につき仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

被告会社は、日本生命保険相互会社の直系子会社であって、日本生命が締結した保険契約について、保険契約者の病歴、職歴等の調査を行うことを業務とする会社である。

原告は、昭和五五年一月一日、被告会社に調査職員として雇用され、三か月の試用期間を経て同年四月一日に正社員となり、昭和五六年四月一日、選任調査職員となった。調査職員である原告は、被告会社又は日本生命から調査資料を自宅あての郵送で受け取り、所定の期限内に、自宅から被調査者宅等に赴いて必要な調査をしたうえで調査報告書を作成し、これを被告会社東京支社等に送付する方法で調査活動を行っていた。原告の調査担当区域は何度か変更されたが、昭和五七年六月二日当時は、千葉県佐倉市、成田市、東金市、印旛郡、山武郡及び香取郡であった。

2  解雇の意思表示

被告会社は、原告に対し、昭和五七年六月二日付けで解雇する旨の意思表示をし(以下「本件解雇」という)、原告が被告会社の選任調査職員としての従業員の地位を有することを争う。

3  賃金請求権

原告の賃金は、毎月支給される固定給、調査料及び調査交通費と、毎年七月及び一二月に支給される一時金とから成り、昭和五六年一月から一二月までの間の支給額は、固定給が九六七、二七〇円、調査料が二、四〇七、九二〇円、調査交通費が一、一〇九、二〇〇円、一時金が八三〇、七九五円の合計五、三一五、一八五円であり、一か月平均四四二、九三二円であった。また、昭和五七年四月から固定給は一二、九五〇円昇給した。したがって、原告は、本件解雇当時、一か月四五五、八八二円の賃金を得べき地位にあった。

4  よって、原告は、被告に対し、原告が被告の選任調査職員としての従業員の地位を有することの確認を求めるとともに、本件解雇の翌日である昭和五七年六月三日から原告が被告会社において従前の正常な業務に復帰するまで、毎月末日限り、一か月四五五、八八二円の割合による賃金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める(ただし、印旛郡及び香取郡については、各一部が原告の調査担当区域である)。

2  同2の事実は認める。

3  同3のうち、被告会社が原告に対し固定給、調査料、調査交通費及び一時金として主張の金員を支給したこと並びに主張の固定給の昇給があったことは認め、その余の事実は否認する。調査交通費は賃金ではなく、調査に要した実費支給である。

三  抗弁

1  調査交通費支給規定の改正

被告会社は、昭和五一年七月一日から、調査職員に対して適用する「調査職員就業規則」(以下「就業規則」という)及びその付属規定である「調査職員に対する調査交通費等の支給規定」(以下「支給規定」という)を制定し、実施してきた。この支給規定によれば、調査活動に必要な調査交通費は、公共交通機関を利用したものとして、その最低料金を実費として支給することとされていた。

ところが、最近、調査職員の多くが個人所有自動車を用いて調査活動を行うようになったため、被告会社は、その実情にかんがみ、むしろ個人所有自動車による調査を公認し、これを会社の管理下に置くことによって、その実情を把握するとともに、事故の防止及び万一の場合の企業責任の明確化を図り、自動車使用の場合の調査交通費も、その実態に合致した実費を支給することが望ましいと考えた。また、自動車使用の調査職員からも、従来の取扱いでは、その都度、公共交通機関の路線、運賃等を調べて調査交通費を要求する手間が要り、複雑で困るという批判があった。

そこで、被告会社は、各種の調査を行い、資料を収集したうえ、調査のための走行に要した費用一切を負担するという基本方針の下に対キロ経費試算表を作成し、被告会社の従業員の大多数が加入する全日本調査労働組合(以下「組合」という)と協議を重ね、そこでの合意に基づいて、昭和五七年三月一六日、支給規定を改正するとともに、新たに「調査職員個人所有自動車の業務上使用に関する取扱い規定」(以下「取扱規定」という)を制定し(以下、改正後の支給規定と取扱規定を合わせて「改正規定」という)、これを同年五月一一日から実施することとした。

2  改正規定に対する原告の対応

被告会社は、改正規定の実施に向けて、原告その他の個人所有自動車を使用する調査職員に対し、取扱規定に従って、所定の任意保険に加入したうえ会社の承認を得るため所定の申請書を提出するよう指示した。しかし、原告は、この指示に従わず、同年四月一九日付け内容証明郵便により、被告会社に対し、改正規定は無効であり、原告は改正規定に従わない旨の意思表示をした。

被告会社は、原告の見解は誤解に基づくものであろうかと考え、同月二三日付け内容証明郵便により、原告に対し、原告は改正規定に従うべき義務があることを注意するとともに、被告会社の見解及び指示について説明するので同月三〇日に東京支社に出頭するよう命令した。これに対し、原告は、同月二七日付け内容証明郵便により、被告会社に対し、改正規定は無効であり、更には就業規則そのものも原告への周知及び原告の同意を欠くから無効であり、右の出頭命令には従わない旨を通知し、指定の日時に出頭せず、会社の業務命令に従わなかった。

被告会社は、原告に対し、再度の説得を試みるとともに弁明の機会を与えるため、同年五月一日付けの内容証明郵便により、同月七日に東京支社に出頭するよう命令した。原告はようやく右命令に応じて出頭したので、被告会社は、原告の見解は誤りであると説得するとともに、就業規則及び改正規定に従う意思の有無を尋ねたが、原告は、依然として改正規定に従わない旨の意思表示を取り消す意思がない旨を主張した。

被告会社は、更に念のため、内容証明郵便により、翻意の意思の有無について二度にわたり原告の回答を求めた。これに対し、原告は内容証明郵便により回答をしてきたが、その内容は、明確に翻意する旨のものでないばかりか、過去における調査担当区域の変更等について不満を述べ、被告会社を非難するものであった。

3  本件解雇の理由

よって、被告会社は、原告には会社の就業規則その他これに付属する適法な諸規定に従う意思がないものと認め、このような原告の一連の行為は業務命令に違反し、不当に反抗する労働契約上の重大な義務違反であり、かつ、経営秩序の破壊につながるものであるから、就業規則付属の調査職員賞罰規定(以下「賞罰規定」という)九条一項一三号及び二項を適用して、本件解雇をした。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1のうち、改正前の支給規定では調査交通費が公共交通機関の使用料として支払われていたこと、被告会社が昭和五七年三月一六日に支給規定の改正と取扱規定の制定をし、同年五月一一日から実施することとしたことは認める。

2  同2のうち、原告が被告会社あてに同年四月一九日付けの内容証明郵便を発し、その後、原告と被告会社との間で内容証明郵便の交換があったこと、原告が同年四月三〇日には東京支社に出頭せず、同年五月七日に出頭したことは認める。

3  同3は争う。原告には、賞罰規定九条一項一三号に該当するような行為はない。

五  再抗弁

1  解雇理由の不備

被告会社の原告に対する解雇通告書によれば、「今回の貴殿の合理的な理由のない反抗的言動は、労働契約上の重大な服務義務違反、経営秩序違反であり」と解雇理由を述べている。しかし、これは、原告の言動がどのような理由により服務義務違反となり、経営秩序違反となるかが示されていない抽象的な解雇理由であるから、本件解雇は、理由が備わっていないものとして無効である。

2  解雇権の濫用

原告の調査担当区域においては、個人所有自動車を使用して調査活動を行わざるを得ない。そして、改正前の支給規定においては、このような場合、被告会社が調査交通費の名目で支給していた金員は、公共交通機関を利用したものと見なしたその使用料であったとはいっても、実質的には、調査に要した実費を含んだ賃金としての性質を有していた。ところが、改正規定が適用されると、勤務内容が同一であっても、原告が受けるべき調査交通費は大幅に減額されることとなる。このように労働条件を不利益に変更する改正規定は、原告の同意がないから無効である。

仮に改正規定が有効であるとしても、調査活動に自動車を使用しなければならない原告にとっては、改正規定が適用されると、実質的な減収となり、自動車の維持管理経費すら賄えない赤字が生じてしまうことともなった。しかも、他方で、自動二輪車を使用する場合は従来どおり公共交通機関の使用料として調査交通費が支給されるため、これとの間で不平等な取扱いがされることにもなる。

そこで、原告は、このような改正規定の効力には法的に問題があると考え、被告会社に対し、文書のやり取りという公正、平穏な方法により自己の見解を表現し、異議を述べたのである。そして、この異議申立て後、被告会社との間の話合いが円滑に進まず、原告が最初の出頭命令を拒否したり、反抗的との印象を与えるような言動をするに至ったことには、原告を納得させようという姿勢を欠いた被告会社の態度に責任がある。すなわち、被告会社は、原告が改正規定に従わなければ解雇するという意思を実質的に表示しながら話合いを行ったものであり、被告会社のこの姿勢は、原告の異議申立て後は原告に全く調査資料を送付しなくなったことにも表われている。

したがって、このような原告の言動に対し、改正規定に容易に承服しないことを理由として解雇することは、解雇権の濫用であり、本件解雇は無効である。

六  再抗弁に対する認否

1  再抗弁1は争う。解雇通告書には、それまでの原告の言動が反抗的であり、服務義務及び経営秩序に違反することが具体的に明記されており、何ら理由不備の違法はない。

2  同2は争う。調査交通費はあくまでも実費を支給するものであって、賃金ではない。支給規定の改正前において支給額と実費との間に多少の差があったとしても、支給額を実費に合うように改正するのは当然の措置であって、労働条件を不利益に変更するものではない。仮に不利益変更であるとしても、この改正については組合との合意があるから、改正規定は有効である。

また、改正規定に対する原告の態度は、単に異議を述べたなどというものではなく、改正規定は無効であるとして、これに従う意思がないことを終始明確に示し続けたものである。そして、原告が最後まで改正規定の無効を主張して自動車使用に必要な手続をとらない以上、被告会社としては、原告に一件たりとも調査を命ずることができないのは当然であり、原告を調査職員として雇用しておく実質的理由を欠くことになる。

第三証拠関係

本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりである。

理由

一  本件解雇に至る経過

請求原因1(原告の調査担当区域の一部を除く)及び同2の事実、改正前の支給規定では調査交通費が公共交通機関の使用料として支払われていたこと、被告会社が昭和五七年三月一六日に支給規定の改正と取扱規定の制定をし、同年五月一一日から実施することとしたこと、原告が被告会社あてに同年四月一九日付けの内容証明郵便を発し、その後、両者間に内容証明郵便の交換があったこと、原告が同年四月三〇日には東京支社へ出頭せず、同年五月七日に出頭したこと、以上の事実は当事者間に争いがない。

これらの事実に、(証拠略)を総合すれば、次の1ないし5の事実が認められ、原告本人尋問の結果中この認定に反する部分は採用できず、他にこの認定を覆すに足りる証拠はない。

1  原告は、請求原因1(原告の調査担当区域の一部を除く)のとおり、被告会社に調査職員として雇用され、千葉県北東部を中心とした調査担当区域において保険契約についての調査活動を行っていたが、その区域は公共交通機関が十分に発達していない区域であったため、原告は、この調査活動に個人所有自動車を使用していた。

被告会社は、昭和五一年七月一日に就業規則及びその付属規定である調査職員賃金規定、支給規定等を制定し、実施していた。これによれば、調査職員に対しては、賃金とは別に、調査活動に必要な調査交通費として、被告会社から交付された調査資料に基づき最低及び最短距離の原則に従って公共交通機関を利用した最低料金が、調査職員からの請求に基づいて、実費として支給される旨が定められていた。しかし、実際の調査活動にどのような交通手段を用いるかは、実情に応じ調査職員の判断に任されており、ただ、調査交通費については、原告のように個人所有自動車を使用した場合であっても、公共交通機関を利用したものと見なして、その必要最低料金相当額が支給される取扱いとなっていた。

2  被告会社では、その調査活動を従来は全国約一三〇〇人の者に嘱託し、その嘱託員に自宅を中心とした近隣地域における調査を行わせていたが、調査の精度向上、効率化を図るため、昭和五四年から、より少数(全国で約三七〇人)の専門の調査職員を採用し、これに調査を行わせるという職員制度への切替えを始めた。そして、これによる調査区域の拡大等に伴い、漸次、調査活動に個人所有自動車が使用される例が増加し、被告会社の調査によれば、調査職員制度が確立した昭和五六年三月ころには、調査職員の約八割が個人自動車を保有し、調査活動に使用している状況となっていた。

そのため、被告会社では、実際には調査職員の多くが自動車を使用して会社業務を行っているにもかかわらず、これに対して何らの手当てもしないで、黙認という状況のまま放置しておいたのでは、事故等の場合に企業としての責任を十分に果たすことができないこと、また、調査交通費についても、実費支給が原則であるうえ、調査職員の間から、現実には利用していない公共交通機関の路線、運賃等をその都度調べて請求しなければならないという煩雑さに対する批判も出ていたことを考慮し、職員制度の確立を契機に、この際、個人所有自動車を使用して調査活動を行うことを正面から認め、調査職員の自動車使用状況を正確に把握するとともに、それに伴うべき手当てを施し、また、その場合の調査交通費も、自動車使用の実態に即して必要な実費を支給するのが適当であると考えた。

そこで、被告会社は、同年中ごろから関係規定の改正に着手し、調査交通費についても、調査職員の自動車使用の実態等を調査のうえ、調査のための走行に要した費用一切を会社が負担するという基本方針の下に、排気量一〇〇〇ccの車種を使用し、一か月少なくとも一五〇〇キロは走行し、燃費は一〇割、保守料、保険料、諸税、減価償却費等は八割を会社が負担するもの(二割は私用に供されるとみた)として対キロ経費を試算し、これに基づいて、一か月につき走行一五〇〇キロまでの対キロ経費を二五円、一五〇〇キロを超える部分のそれを一三円とする案を作成して、これらの規定改正案を組合に提示した。

これに対し、組合は、独自に走行キロ調査を行って現行と改正案とにおける調査交通費受給額を対比するなど、内部で慎重に検討した。そして、被告会社と組合との間で前後六回にわたる協議が行われ、その間、組合から対キロ経費の上積みが要求されるなどした結果、昭和五七年三月一六日、両者間に、(1)調査職員個人所有自動車の業務上使用を公認すること、(2)自動車使用の場合の調査交通費は対キロ経費とし、これを一か月につき走行一五〇〇キロまでは二八円、一五〇〇キロを超える部分は一九円とすること、(3)調査職員が個人所有自動車を業務上使用する場合は、会社へ所定の届出をして承認を得、また、責任保険のほかに対人賠償保険五〇〇〇万円以上の任意保険に加入しなければならないこと、を内容とする合意が成立した。

この組合との合意に基づき、被告会社は、同月一六日、その旨、支給規定を改正するとともに新たに取扱規定を制定し、これらの改正規定を同年五月一一日から実施することとした。

なお、改正規定によっても、個人所有自動車を使用しない場合の調査交通費は、従来どおり、公共交通機関を利用したときの最低料金が支給されることに変わりはなかった。

3  被告会社では、右の改正に先立ち、同年二月八日の千葉県地区調査職員の定例出社日の際に、中村専務が、調査職員に対し、現在進行中の個人所有自動車の使用に関する規定の改正の趣旨、内容等について、組合との合意が成立すればとの前提で説明を行った。これに対し、出席していた原告は、質問として「新規定になると今までに比べ調査交通費がかなり減額になる。原告の担当区域は山間部もあって広いので、走行すればするほど損になるのではないか」との不満を述べた。

規定の改正後、被告会社は、その実施に向けて、同年四月一日付けで「調査職員個人所有自動車の業務上使用公認制度の実施と同使用申請書の提出について」と題する書面を各調査職員あてに送付し、その中で、この新制度の説明をするとともに、調査活動に自動車を使用する場合には、取扱規定に従って、使用申請書を同月一五日必着で被告会社に提出して承認を受けること、及び対人賠償五〇〇〇万円以上の任意保険に加入のうえ申請書と共に保険証券を持参して提示することを指示した。

そして更に、被告会社は、同月一四日の千葉県地区調査職員の定例出社日においても、原告らに対し、取扱規定を交付して、山口部長が新制度とそれに従った調査交通費の精算方法等について説明した。また、その時点になっても原告ほか一名が任意保険に加入しておらず、申請書の提出もしていなかったので、山口は、早急に保険に加入して申請書を提出するよう督促した。これに対し、原告は「他のことも考えていますので、そのことはちょっとお待ちください」と答えていた。

しかし、原告は、期限までに申請書の提出等の所要手続を行わず、同月一七日には、山口に対し、電話で、改正規定は不満だから承認できない、再度の改正はできないかとの旨を話したが、山口は、新制度につき重ねて説明するとともに、再改正はできない旨の応答をした。

4  そして、原告は、被告会社に対し、同月一九日付けで、「取扱規定無効通告書」と題し「取扱規定とそれに付随する調査交通費の精算方法等の改正案は、原告の事前の了解同意がないまま一方的に制定したものであり、不当に実施されれば、原告の既存権、私生活行動自由権を侵害し、奪い、今後、長期にわたり不利益を招き、多大の損害を受けるため、断固として承服できない。よって、今後は取扱規定と精算方法等の改正案は無効として通告するとともに、今後、被告会社より何らかの弾圧や差別、不公平な扱い、処分、又は不利益な行為が行われた場合は、法的手段に訴えざるを得ない」旨を記載した内容証明郵便を送付した。

これを受け取った被告会社では、原告は何か誤解をしているのであろうから、直接に会ってそれを解きたいと考え、原告に対し、同月二三日付けで、「取扱規定及びそれに付随する諸事務手続は合法的かつ正規に制定されたものであり、職員である原告はこれを守るべき義務がある。ついては、就業規則に則り、会社のすべての規則を守り、上司の指示に従ってその職責を遂行するよう改めて指示する。なお、会社の規則に違反し、上司の指示に従わない場合には、就業規則に則って厳重な処置をせざるを得ない。おって、この会社見解及び指示について説明を行うので、四月三〇日午後一時に東京支社へ出頭するよう指示する」旨を記載した内容証明郵便を送付した。

これに対し、原告は、同月二七日付けで、「就業規則は現在まで原告に明示されたことがないから、無効である。取扱規定は労働基準監督署に届け出て承認済みであるか。仮に届け出て承認済みであっても、原告への周知及び了解同意がないため、民事的効力は生じない。原告には東京支社への出頭義務もなく、将来のため、説明書の送付を強く指示する」旨を記載した内容証明郵便を被告会社に送付し、指示された日時には東京支社へ出頭しなかった。

被告会社は、この書面を受け取ったが、再度、原告に直接会って説明を行おうとし、原告に対し、同年五月一日付けで、「東京支社への出頭指示の拒否や出頭義務がないとの通告は、明確な業務命令違反であり、職員としての義務を放擲したものである。就業規則は、もとより労基署の認証を受けたうえ制定されたもので、全職員が遵守すべき会社の諸規則の中枢根幹をなすものであり、これが無効であるとの通告は、重大な意思表示である。就業規則や取扱規定が無効であるとの通告は、自ら会社との雇用契約の根幹を否定したものであり、原告には、もはや被告会社との雇用契約を存続する意思なきものと断じざるを得ない。しかし、原告にこれらのことを説明し、弁明の機会を与えるために、五月七日午後三時に東京支社へ出頭するよう再度指示する」旨を記載した内容証明郵便を送付した。

原告は、今度は、右の指示に従って東京支社に出頭した。被告会社は、是永常務や出沢常務らが、原告に対し、前記内容証明郵便に示された会社の見解や指示の内容を改めて詳しく説明するとともに、就業規則や取扱規定が無効であると主張する理由を尋ねた。しかし、原告は、会社の説明に納得せず、自己への周知や了解同意がないから無効であるとの主張を繰り返し、それ以上は弁護士の立会いがなければ話はできないと答えたため、被告会社は、やむなくこの日の面談を終えた。

被告会社は、この面談においても原告の態度が変わらなかったため、更に同月一一日付けの内容証明郵便で、原告に対し、「就業規則や取扱規定の無効を主張し、会社の再々の指示をも了解しないことは、原告にもはや雇用契約存続の意思なきものと判断せざるを得ない極めて重大な意思表示である。ついては、念のため、今一度、翻意の意思(今後、就業規則等の会社の諸規則を遵守し、上司の指示に従って誠実に職務を遂行することを誓約する意思)の有無を確認したいので、五月二一日までに内容証明郵便で回答されたい」旨を通知した。

これを受けて、原告は、同月一七日付けの内容証明郵便で回答したが、その内容は、「反省すべき点は今後十分反省し、上司の命に従って、会社のために努力する所存である。ただ、会社といえども、私有車を社用に使用する場合は所有者個人の同意が必要であり、命令権はないのではないか。四月二八日付け文書で山口部長あてに、五月一日からは業務にはバイク及び公共交通機関を利用するので、個人所有自動車の業務上使用申請書の提出はしないと通知してある」旨のものであり、このほか、同書面には、被告会社が過去に原告の調査担当区域に職員を新規採用して担当区域の大幅な変更を命じたことや、四月中旬ころから原告に対して調査資料を送付していないことなどを非難し、これらにつき然るべき返事がほしいとの記載がされていた。

被告会社は、この回答では明確に翻意が認められないとして、更に、同月二一日付けの内容証明郵便で、原告に対し、「重ねて、翻意の意思の有無について、五月二八日までに内容証明郵便で明確に意思表示をするよう通知する。なお、期日までに回答がなく、あるいは明確な翻意の意思表示がない場合は、雇用契約存続の意思がないものと見なし、解職の処置をとるのやむなきに至る」旨を通知した。

これに対し、原告は、同月二六日付けの内容証明郵便で、「会社の就業規則、規定を遵守し、上司の指示に従って職務を忠実に遂行することは五月一七日付け書面で明確である。ただし、私有車のことは同書面で回答のとおりである。同書面による問合せに対し会社の回答を重ねてお願いする。回答の内容いかんによっては、原告も生活維持のため直ちに最終決定をする」旨の回答をした。

5  被告会社は、この回答によっても明確に翻意するものとは認められないと判断したので、同年六月一日付けの「解雇通告書」と題する内容証明郵便で、原告に対し、前記四月一九日付け内容証明郵便による原告からの無効通告に始まった一連の経過を具体的に記載したうえ、「今回の貴殿の合理的な理由のない反抗的言動は、労働契約上の重大な服務義務違反、経営秩序違反であり、最早これ以上貴殿との雇用契約存続は容認いたし難く、昭和五七年六月二日付けにて貴殿を解雇する」との意思表示をした。

二  改正規定の効力

原告は、改正規定の効力やそれによる調査交通費の取扱いの妥当性を争うので、まず、これについて検討する。

1  原告は、改正前の支給規定においては、被告会社が支給する調査交通費は、実質的には賃金としての性質を有していたと主張する。

しかし、前記認定のとおり、改正前の支給規定においても、調査交通費は、賃金とは明確に区別されて、調査活動に要した交通費を実費として支給するものと定められており、ただ、実際に公共交通機関を利用したか、個人所有自動車を使用したかを問わず、一律に、調査資料に基づき最低及び最短距離の原則に従って公共交通機関を利用した料金相当額を、この実費とする取扱いがされていたのである。このような一律の取扱いは、実際には調査職員が公共交通機関を利用しなかった場合の取扱いについて明文規定を欠いた状況の下では、必要経費の算出方法として妥当な取扱いであったものということができる。

したがって、公共交通機関以外の交通手段を用いることによって、調査職員が現実に要した費用と被告会社から支給される調査交通費との間にある程度の差額が生じることがあったとしても、それは右のような取扱いによる結果にすぎず、そのために、調査交通費が実費支給ではなく実質的賃金の性質を有していたものということはできない。

なお、成立に争いがない(証拠略)によれば、調査交通費は、比例給賃金である調査料と合わせて事業所得として課税対象となり、源泉徴収が行われていることが認められるが、同時に、確定申告により必要経費として控除されることも認められるのであるから、このような処理は専ら徴税技術上の措置にすぎないものと考えられ、この源泉徴収が行われているからといって、調査交通費が賃金性をもつものということはできない。

2  支給規定の改正及び取扱規定の制定は、前記認定のとおり、調査職員が調査活動という会社業務のために個人所有自動車を使用することが多くなったという実態に対応して、企業責任の明確化と適切な運営を目的として、個人所有自動車の業務上使用の公認と、それに伴う手当てとしての対人賠償任意保険の加入の義務づけ等を定めたものであるから、その趣旨及び内容において至当なものであったということができる。そして、この場合の調査交通費については、調査活動に要した交通費を実費として支給するものである以上、自動車の業務上使用に伴って要する費用を適正に算出することができるならば、それを実費として支給するのが本来のあり方として合理的である。

被告会社は、前記認定のとおり、この費用を算出するに当たり調査職員の自動車使用の実態等を調査のうえ、保険料、減価償却費等も含め調査のための走行に要した費用一切を会社が負担するという基本方針の下に対キロ経費を試算し、これに基づいて作成した案を組合に提示し、独自の調査を行った組合との間で前後六回にわたる協議を重ね、その中で組合から出された上積み要求を容れてその合意を得、この合意に基づいて自動車使用の場合の調査交通費の取扱いを定めたものである。そして、(証拠略)によれば、当時、組合には、原告ほか一名を除くその余の調査職員全員が加入していたことが認められ、これらの事情を総合すれば、改正規定による自動車使用の場合の調査交通費の取扱いは、自動車の業務上使用に伴って要する費用を適正に算出して定められたものと認めるのが相当であり、合理的なものということができる。

3  原告は、改正規定が実施されると、勤務内容が同一であっても、原告が支給を受ける調査交通費が大幅に減額になると主張する。そして、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、それが大幅なものかどうかはさておき、その主張のようにある程度の減額が生じるであろうことが認められる。殊に、原告の調査担当区域は前記のとおり公共交通機関が十分に発達していない区域なのであるから、そのような区域においては、一定の目的地に到達するための交通手段として、公共交通機関を利用するよりも自動車を使用する方が効率的かつ経済的であることが多いことは、経験的に十分考えられるところである。

しかし、既に述べたとおり、調査交通費は調査の必要経費の実費支給であり、また、改正規定による自動車使用の場合の調査交通費の取扱いは適正な費用の算出に基づいているものと認められるのであるから、従来に比べれば減額になるという不利益はあっても、それは従来が過剰に支給されていたのが是正されるというべきものであって、改正規定による取扱いが合理性を欠くということにはならない。

なお、原告は、自らの走行実績に基づいて計算すると、改正規定によったのでは、支給される調査交通費は自動車の維持管理経費にも満たなくなる旨を主張し、それに副う(証拠略)の試算表を提出する。しかし、前記のとおり公共交通機関を利用した場合の調査交通費が最低及び最短距離の原則に従った必要最低料金とされていることや、被告会社の試算が組合との協議にさらされていることに照らすと、この試算表の内訳をそのまま必要経費として認めることには疑問があり、他に、右の主張を認めるに足りる証拠はない(ちなみに、<人証略>によれば、改正規定実施後においても、調査職員の間から、自動車使用の場合に支給される調査交通費が低額に過ぎ、現実に要した費用にも満たないとの苦情は表明されていないことが認められる)。

また、改正規定によっても、調査活動に自動二輪車を使用した場合には、従前どおり公共交通機関を利用したものと見なされ、その必要最低料金相当額が調査交通費として支給される取扱いであることは前記認定のとおりであるが、原告は、この点につき、自動車を使用する場合との間で不平等が生じると主張する。しかし、改正規定による取扱いによって自動車使用の場合に損失が生じるというのであれば格別、そのようには認められないのであるから、結局、これは、自動二輪車使用の場合には必要以上の調査交通費が支給されることを指摘するものにすぎない。したがって、この自動二輪車使用の場合の取扱いを検討する余地があるとはいえても、そのために自動車使用の場合の取扱いが合理性を欠くことになるわけではない。

4  以上のとおり、支給規定の改正と取扱規定の制定は、調査職員の個人所有自動車の業務上使用に関する至当な措置であり、この場合の調査交通費の取扱いの変更も、実費支給という本来のあり方に合致させた合理的なものである。したがって、これらの改正規定は、原告に調査交通費の減額という限りでの労働条件の不利益変更をもたらすものではあるが、その同意がなくても、原告に対して効力を生じるものといわなければならない。

三  本件解雇の効力

右のとおり、改正規定は原告に対しても効力を生じるものであるところ、原告が被告会社に対し昭和五七年四月一九日付け内容証明郵便で取扱規定の無効を通告したことに端を発し、原告と被告会社との間で取扱規定の効力等をめぐって内容証明郵便の交換や面談があり、被告会社からの翻意の有無の確認とこれに対する原告の回答があって、ついに本件解雇がされたことは、前記認定のとおりである。そこで、これに基づき本件解雇の効力について判断する。

1  被告は、原告のこれら一連の行為に対し、賞罰規定九条一項一三号及び二項を適用して本件解雇をしたと主張する。そして、(証拠略)によれば、右の規定は次のように定められている。

「第九条(懲戒解雇)

1  次の各号の一に該当する場合は懲戒解雇処分にする。

但し、情状によって停職または昇給停止処分に止めることがある。

(13) 業務上の指示命令に違反もしくは不当に反抗し業務の執行を妨害した場合

2  懲戒解雇処分に該当するもののうち、特別の事情のあるものについては、諭旨の上解雇することがある。」

2  ところで、改正規定の実施により、それが本来のあり方であるとはいっても、原告には従来よりも調査交通費の支給額が少なくなるという不利益が生じるのであるから、原告がこれについて不満をもつのは、ある意味で当然のことといえる。したがって、二月八日の定例出社日や四月一七日の山口部長に対する電話の中で原告がその不満を表明したことも、うなずけるところである。また、発端となった同月一九日付けの被告会社あての通告書において取扱規定が無効であると主張したことも、その主張の当否や語調の点はともあれ、この不満の表明として、それ自体は特に非難されるべきものではないと考えられる。

しかし、その後の一連の経過をみると、まず、被告会社が原告に対してした出頭指示は、原告から取扱規定の無効通告を受けたことに対する適切な措置であり、正当な業務上の指示というべきであったにもかかわらず、原告は、出頭義務はないと強弁してこれに従わず、また、原告本人の供述によっても、原告は入社直後の初期教育において就業規則を手渡され、少なくともそれを手に取って見たというのであるから、原告にその意思さえあればいつでも就業規則を閲読することはできたはずであるにもかかわらず、原告は、それが自分に明示されたことがないとの理由を挙げて、就業規則そのものの無効までをも持ち出したのであって(このほか、交付済みの取扱規定についても、自己への周知がないと主張した)、これは、すでに不満の表明の域を超えたものといわなければならない。

そして、原告は、被告会社からの再度の出頭指示には従ったものの、その面談において、会社からの説明に納得せず、従業規則や取扱規定の無効の主張を繰り返したのであって、そこには、自らの不満や疑問を投げ掛け、被告会社の説明にも耳を傾けることによって現状を打開しようとする姿勢が見られず、いたずらに態度を硬化させたにとどまっている。また、その後の被告会社からの翻意の有無の確認に対しても、四月一日付けの会社送付書面や同月一四日に交付された取扱規定そのものによれば決してそのように理解すべきものではないにもかかわらず、原告は、改正規定においては、被告会社が調査職員に対し個人所有自動車を業務に使用するよう命令するものという正当でない理解を示して、この命令という点にあえて反発をしている。

更に、原告は、その調査担当区域においては調査活動に自動車を使用せざるを得ないことを自認しているにもかかわらず、五月以降は業務には自動車は使用せず、自動二輪車や公共交通機関を利用するという現実性に乏しい主張をして、個人所有自動車の業務上使用申請書の提出はしないと明言し、最終的な回答においても、就業規則や規定は遵守するとしながらも、当の自動車使用の点については、以後は自動車は使用しないので申請書は提出しないとの前言を維持し続けたのであり、これは、結局、調査活動に自動車を使用せざるを得ない調査職員にとっては、改正規定に従わないことを宣言したに等しい。

このような一連の原告の言動は、調査交通費の減額という不利益が生じることを考慮に入れても、もはや自己の見解を表明し異議を述べたというにとどまるものではなく、被告会社の業務上の指示命令に違反し、又は不当に反抗したとの評価を免れないものであり、これにより原告の調査担当区域における調査業務に支障を来すことは避けられないところであるから、被告会社の業務の執行を妨害したことにもならざるを得ない。すなわち、原告の調査担当区域においては調査活動に自動車を使用せざるを得ないのであるから、原告が改正規定に従わないと宣言し、任意保険の加入と被告会社の承認という所要手続を行わない以上は、被告会社は、改正規定実施後において自動車を使用しての調査活動を放任することはできず、したがって、原告に調査活動を行わせることができないからである。

そうすると、原告のこれらの行為は、賞罰規定九条一項一三号に該当し、被告会社から再三翻意を促されながら自らの調査活動の根拠となるべき規定の適用を拒否し続けたなどの事情を考慮すれば、懲戒解雇に相当する事由になるものといわなければならない。

3  原告は、原告がこのような言動をするに至ったことには、被告会社の態度に責任があると主張する。

確かに、被告会社からの内容証明郵便の記載には、会社の規則に違反し指示に従わない場合には厳重な処置をせざるを得ないとか、就業規則等に従うとの翻意が明示されなければ解職の処置をとるのやむなきに至るなどの文言がある。しかし、これらは、原告との間の前記の一連のやり取りの中から出てきた文言であって、その間、被告会社には、就業規則や取扱規定の無効、あるいは改正規定の適用拒否を主張し続ける原告に対し、十分に説明し、その見解を聴き、その翻意を促すことによって、できるだけ解雇という事態を回避しようとする姿勢が認められるのであるから、これらの文言をとらえて、被告会社の態度が解雇を迫る高圧的なものであったとか、その他問題があったものということはできない。

また、(人証略)によれば、被告会社は、原告に対し、昭和五七年四月二二日に調査資料を送付したのを最後に、一時送付を留保することとし、その後はこの送付を行っていないことが認められる。しかし、生命保険関係の調査という業務の性質からも、また、自宅を中心とする調査活動という業務の態様からも、調査職員には被告会社との間に相当程度の信頼関係が要求されるものということができるし、調査交通費についても、調査職員からの請求に基づいて支給されるのであるから、利用した交通手段に従った正しい請求が行われることがその前提になっていることは当然である。したがって、それまでも自動車を使用し、以後も自動車使用が必要な原告が、期限までに改正規定の実施に向けての所要手続を行わず、その後も就業規則や取扱規定の無効を主張し続け、更に、以後は自動車は使用しないと明言するなどした一連の過程の中にあっては、被告会社において原告に調査を任せられないと考え、調査資料の送付をしばらく見合わせることとしたのも、やむを得ない措置として是認し得るものといわなければならない。

そして、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被告会社は同年五月の千葉県地区調査職員の定例出社日に原告を呼び出さなかったことが認められるが、(証拠略)によれば、定例出社日は調査職員に対し業務上の指示、指導、連絡等を行うためのものであることが認められ、原告は、当時、右のような事情から継続的に調査活動を行っておらず、かつ、被告会社との間で個別的に前記一連のやり取りを続けていたのであるから、被告会社がこれに対し定例出社日の出社の要なしと考え、その呼出しをしなかったことも、不当な措置ということはできない。

なお、原告本人は、原告が就業規則の無効を主張するようになったのは、被告会社からの四月二三日付け内容証明郵便の通知文言に誘発されたためである旨の供述をするが、同通知(<証拠略>)の文言から就業規則無効という主張が容易に誘発されるものとは認め難く、また、原告本人は、それ以前の、原告の調査担当区域における調査職員の新規採用とこれに伴う担当区域の変更や、原告に送付される調査件数の減少傾向をとらえて、被告会社が原告を辞めさせたい意向を有していたかのようにも供述するが、原告の憶測の域を出ない。

そして、このほか、被告会社の態度が原告の言動に影響を及ぼしたことを窺わせるような事情は見いだせない。

4  以上によれば、被告会社が前記の原告の一連の行為を懲戒解雇事由に該当するとして本件解雇をしたのは、やむを得ない相当の措置というべきであって、原告の解雇権の濫用の主張は、いずれも理由がない。

また、原告は解雇理由の不備による解雇の無効を主張する。しかし、解雇の意思表示に当たって、必ずしも解雇理由を告知しなければならないものとは解されないし、本件の解雇通告書(<証拠略>)には、原告からの取扱規定無効通告に始まる一連の経過が具体的に記載され、それらの原告の言動が解雇の事由とされたことが明記されているのであるから、いずれにせよ、解雇理由が不備であるとの指摘は当を得ない。

したがって、本件解雇は有効である。

四  結論

よって、原告の本件請求は、その余の点について判断をするまでもなく、いずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 片山良廣)

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